フェラーリを1000台売った男

フェラーリを1000台売った男 / 榎本 修

中古フェラーリ専門店の「ナイトインターナショナル」は、社長、メカニック、メカニック助手、そしてこの本の著者である榎本修店長(略してエノテン)の4名の会社で、エノテンは唯一の営業マン。中古専門なので、同じクルマが下取りで店に戻ってきて、別の客に売った数も含めたとしても、91年以来16年間でフェラーリを1000回売ったとは凄いことです。

そんなエノテンが、サラリーマンからフェラーリ屋に転職し、その後の人生を変えた「部長」と出会い、さらに、中古外車の販売店だったナイトをフェラーリ専門にしていく話、また、いろいろな濃いお客さんとのエピソードをまとめた、とても面白い本でした。

なお、「そのフェラーリください!」の清水草一も、エノテンからフェラーリを買っています。って言うか、この本の編集をしてるので、仕掛けた張本人なんでしょうね

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(引用はすべて本書より)

リアル購入ガイド:テスタロッサ
予算の関係で前期型を狙う方は、アイドリングで最低でも5分間は暖気しなくてはエンジンが安定しないので、その爆音と暖気時間に耐えうる住宅環境が必要になります。ご近所迷惑のために手放された例も多いのです。

モデルの時期やタイプによる購入ポイントを紹介。また、年式が1年ちがうと値段が軽く100万は違うそうです(すげぇ)。

フェラーリの故障や修理金額は、業界内でも謎が多かった。修理工場によって金額がまちまちで、誰を信用していいのか判断できない。板金の金額も、それがフェラーリであるというだけでヒトケタも跳ね上がるという状況。部品代が他より高いといっても、工賃が以上に高いのは納得できない。フェラーリ業界は何かがおかしい。
このようにフェラーリの実態がつかめない不合理な状況の「起源」は一体どこにあるのだおろう。
まず、扱っている業者地震がフェラーリというものをよく知らないでいる。自分では知っていてユーザーに隠しているのではなく、知らないということを自分自身にも隠している。その事実の歪曲が、将棋倒しのようにフェラーリ界に波及してしまっているのではないか。
故障が多いということについても、噂だけが進行していて、実際はそれほど故障していないという実感が僕にはあった。

お客さんの不安・不満を解決し、ナイトをフェラーリ専門に。

クルマの楽しさというものは、乗っているクルマの車種や金額とは関係がなく、その人の思い入れに関わるものではないでしょうか。苦労して買ったクルマほど、楽しくて嬉しいものです。そして少年度が高いほど、そのクルマと一体になれるのではないでしょうか。

こういう気持ちが心の底にあるから、投資目的でなく、純粋にフェラーリに乗りたいという人の気持ちが分かるんでしょうね。

榎本「儀式です。まず、『僕はいつからフェラーリのことを思っていました・・・』といった、お客様の熱い思いの歴史をじっくり伺ってからですね、死ぬほどほしいんだけど本当に買っていいのか?という、最後の迷いを僕が取り除いてあげる儀式なんです。」
清水「質問。お客さんの迷いって、どんな種類がありますか」
榎本「迷いというか、心にかけているブレーキと言ったほうがいいですね。それは人によって違いますから、それを探し出して、解除してあげることに全精力を注ぐわけです。
清水「具体的には?」
榎本「そうです。<故障するんじゃないか>。これについては・・・」

続きは本を読んでください 欲しくてたまらない人の迷いをひとつひとつ取ってあげれば、もうアクセル全開で行くしかないですよね。

清水「じゃ、店長の幸せは?」
榎本「それはもう、お客様に幸せになっていただくことが一番の幸せですけど、売る側として、いろんな濃い方と触れ合えるのも、最高の幸せですね」
清水「やっぱり濃いですか」
榎本「フェラーリを買う方には、大変な実力者からダメな人、病んだ人まで様々で、本当に濃いです。そういう方たちと、人生対人生でぶつかりあうことも多いです」
清水「裸の付き合いみたいなもんですね!?」
榎本「はい。心の琴線同士を激しくこすり合わせるとでも言いましょうか。アツい魂同士の触れ合い、これがたまりません。

エノテンにとってフェラーリ屋は天職ですね。


  1. 始めに 清水草一
  2. さらばフェラーリ屋
    • 自動車メーカーのエンジニアから町のフェラーリ屋へ
    • 「部長」との出会いがすべてを変えた
    • フェラーリ並行輸入ビジネスのスタート
    • 「現実的な目標」の大切さ
    • スーパーヒーローの条件
    • 「八王子のコロッケ」に存在する幸せ
    • 本気で戦ってないやつは現実を受け止められない
    • 君はラーメン1杯に1万円払えるか?
    • いざという時、男は燃えるしかない
    • 本気になった男の商談は必ず決まる
    • 「人生のフェラーリ」をあきらめるな
    • 特別付録: 「328GTS/GTB」、「テスタロッサ」リアル購入ガイド
  3. ナイトインターナショナル
    • 僕が仕入れた328GTS。それは僕が初めて味わう「希望」だった
    • 結果を出せば、仕事のやり方は任せてもらえる
    • フェラーリ専門店への業態変更を決意
    • 「事実」を冷静に見つめることで「プラン」が生まれる
    • 売れることで始まる好循環
    • 特別付録: 「348tb/スパイダー」、「512TR」リアル購入ガイド
  4. ひとつの青春
    • 気持ち負けした人と態度には二つの種類がある
    • 心に傷を負ったフェラーリオーナーたち
    • 殴り返さないのは「逃げ」だ
    • ガソリン代すらないのに、奄美大島へ
    • 無理をしてまでフェラーリを買った意味
    • 君が逃げているものの正体は、君自身だ
    • 行き止まりに向かっての疾走
    • 特別付録: 「F355」、「360モデナ」リアル購入ガイド
  5. ある成功史
    • 白い355F1スパイダーを2台所有する男
    • 4台目のフェラーリは「チャレンジストラダーレ」
    • 父親からの養育費不払い、そして・・・
    • 父への憎しみと母への恩返しの想いを胸に
    • 自立した人間だけが周囲を幸せにできる
    • 仕事への「志」が成功を導く
    • 特別付録: 「チャレンジストラダーレ」、「F430」リアル購入ガイド
  6. フェラーリウィルス
    • 大手化学メーカーの社員がフェラーリを買った理由
    • 「いつかはクラウン」なんてレールは拒否する
    • 「金八先生」の偽善を見抜け
    • サーキットの狼世代の習性?
    • フェラーリオーナーと自分との格差
    • 目標に根拠がないから目が死ぬ
    • フェラーリ界の聖書は言う、「自立せよ!」と
    • 特別付録: [F40」、「F50」リアル購入ガイド
  7. 「部長」との再開
    • 出口のない閉塞感、なぜか部長に会いたくなった
    • 長い歳月のうちにすり減った「何か」
    • 再開のタイミングは早過ぎたのか
    • 問題は「男の器」だ
    • クルマが三流でも、乗っている男が一流ならばそれでいい
  8. 巻末スペシャル対談: 榎本修 vs. 清水草一
    • 「僕のはテクニックじゃなくて<怨念営業>です!」