
まずは、私事ですが、今年の4月3日、2年ぶりにブログを再開し、このエントリーが記念すべき100件目となります(補足: だから、タイトルが「えらいこっちゃ!」ではありません)。何とかここまで来れたのも、日に日に増える読者の方々と、たくさんの心温めるコメントのおかげです。これからも初心を忘れず、皆さんの応援を活力に、ブログを趣味のひとつと言えるように続けて行きたいと思いますので、よろしくお願いします(大感謝)。
さて、大学3年の時に初めてコンピュータに触れ、27年強も無駄に長くコンピュータと一緒に歳を重ねてきた間には、生き馬の目を抜くような壮絶な戦いを繰り広げ、昨日までナンバー1だった企業が、技術革新に乗り遅れ、一瞬で衰退していく場面を何度も見てきました。インテルはCPUのスピードを3年間で2倍に、し続けて来ましたが、これがクルマだったら、もうとっくに人間では運転できない世界です。
そんな壮絶なIT業界で成功した企業のサクセスストーリーをまとめた本を読むのは、ワクワクする楽しさがあります。初めて「ビッグブルー - IBMはいかに市場を制したか 」(1987年7月発行)を読んだときは、とんでもない893なダークスーツ軍団だなと思いました。それ以降もいろいろ読みましたが、皆さんにも身近なところでは、↓かな。
そして、いま飛びぬけて旬なGoogleの「Google誕生 ガレージで生まれたサーチ・モンスター」も、ドキドキしながら読みました。でも、今回紹介する「グーグル革命の衝撃 / NHKスペシャル」を読んだ感想は、他人事ではなく、マジえらいこっちゃ!でした。
まさに、トム・クルーズ主演のマイノリティ・リポートが現実になりつつあるのです。
- NHKスペシャル > “グーグル革命”の衝撃 - あなたの人生を“検索”が変える
- Google Apps - コラボレーションの未来形 > Google アプリ 企業向け
- INTERNET Watch > 「Google Apps」有料版、日本では1アカウント年額6,300円
- 日経ネット > 米グーグル、日本大学に情報共有ソフト
- 日経ネット > マイクロソフトとグーグル、大学向け無料サービス競う
- Google Labs > Google Music Trends > JAZZ
とは言っても、予知能力者による殺人予知システムや、MATRIXのようなコンピュータによる支配ではありません。映画の中で、主人公の犯罪予防局刑事が街中を歩いていると、そこここに置かれたモニターに呼びかけられたり、主人公の趣向にあったCMが流れたのを覚えていますか? グーグルはすでに音声認識の技術を応用し、テレビ番組の内容に合わせた広告をコンピュータが自動表示するテストを始めているようです。
日本と世界ではグーグルが生活に浸透してる度合いがちがいます。(引用はすべて本書からです)
グーグルが先進国で唯一攻略できていない市場。それが日本だ。調査会社ネットレイティングスによると、2006年3月時点でグーグルの利用率は35パーセント。首位のヤフーの65パーセントに大きく水を開けられている。その後、この差が縮まったという情報もあるが依然として差は大きい。また、広告の売り上げでは、ヤフーの子会社オーバーチュアとグーグルのシェアは、65対35(検索マーケティング会社)という見方もある。
ある調査会社の調査員は・・・
私が思うに、最悪のシナリオは、若い人々が検索に依存しきってしまい、それを唯一の情報源として利用することです。すべての答えを検索エンジンひとつによって得ようとする。グーグルはとても強力なブランドであり、比較的良心的な企業市民としてよい仕事をしていると思いますが、情報をすべて唯一の情報源からくるようになってしまうと、その情報源が商用または政治的な影響を受けていれば、その情報の質が落ちてしまいます。究極のシナリオのように聞こえるかもしれません。私はグーグルを常に利用していますし、その使い方を知っている。しかし、それでも、便利さのために、独立性やプライバシーの多くを犠牲にしようとする傾向が見られます。もちろん、インターネットのページで、何でも入力して答え意を得られるのは素晴らしいことです。しかし、検索エンジンは辞書ではないし、図書館でもない。図書館では、誰かが図書館員に100ドルの賄賂を渡して、私を特定の本を借りるように仕向けるなどと言うことが起こる可能性はあまりない。ですから、悪夢のようなシナリオでは、多くの人が、操作された情報に依存するようになってしまうのではないかと思うのです。
東大の総長も・・・
2007年4月12日。東京大学の入学式の式辞で小宮山総長は、インターネットを通じて誰もが簡単に情報を手に知れられる時代の危うさについて警鐘を鳴らした。
「皆さんには、『常識を疑う確かな力』を養ってほしい。学問的な疑いの直感は、その人の頭の中で多様な知が関連付けられ、構造化されて初めて働くものだ。知を構造化することと、大量の情報をもつことは、まったく異なる」
「最近は、インターネットを駆使して誰でも大量の情報を短時間のうちに入手できるようになった。このような情報環境の中で育った皆さんは、学術情報は簡単に手に入るのが当然だと思っているだろう。しかし、ひと昔前は全く違っていた。私が若い教授だったころ、学術情報を入手するためには、多くの論文に目を通したり、人に話を聞いたり、カードを作って整理したりと、大変な手間が必要だった。もちろん現在の方が便利に決まっている。しかし、その便利さにこそ落とし穴がある。情報収集にかけた膨大な手間と時間は、無駄なように見えて、構造化され、それが『閃き(ひらめき)』を生み出す基礎となっていたからだ。インターネットで入手した、構造化されていない大量の情報は、『思いつき』を生み出すかもしれませんが、『閃き』を生み出すことは極めて稀だ。頭の中に、いかに優れた知の構造を作ることができるか、それが『常識を疑う確かな力』を獲得する鍵なのだ
筆者も・・・
ちょっと前に、大学一年生の息子と話をしていたときのことである。
息子の友人たちは、インターネットの検索を使ってあっという間に論文を書き上げてしまうというのである。
「検索結果から適当な記事を選んで、コピペして論文を仕立て上げるというチョー楽なやり方なんだよね」
こんなサービスも・・・
試験サービスを集めた「グーグル・ラボ」の中で開始された、グーグル・ミュージックトレンドというサービス。今、何の曲が流行っているかを瞬時に集め、表示するサービスだ。これまでの「ヒットチャート」をリアルタイムで表示するという画期的なこのシステム。実は、このデータは、新しい音声チャットソフト「グーグル・トーク」でネット情報音楽を再生する機能があり、その再生回数や曲名などの履歴が自動的にグーグルに送信され、集められた結果なのである。
つまり、個人個人が「グーグル・トーク」という別のサービスで何を聞いたかという履歴データが集積されることで、このヒットチャートは作られているのである。
そして、グーグルのCEOは・・・
シュミットCEOは、過去の複数のインタビューで次のように語っている。
「明らかに、キラーアプリケーションは広い意味で情報検索です。私たちは常に次のキラーアプリケーションを待ち望んでいます。次に重要なデバイスは明らかにパーソナルなものです。私が個人的に望むのは、世界の情報すべてをiPodに相当するものに搭載することです。今後5年から10年の間にそれが可能になるはずです。そして文字どおり持ち歩けるようになるのです。教育が、コミュニケーションがどんなに変わるかを考えてみてください。誰かに何かを言われたとき、それが本当かどうか調べてみよう、と言うことができます。突然、私たちは膨大な知識の詰まったものを常に持ち歩いているのと同じ状態になるのです」
もし、コンピュータが便利な道具から、生活を監視・操作する道具に変わる瞬間が来たら、僕たちは後戻りはできないでしょう。グーグルは比較的良心的な企業市民であると本書にありますが、グーグルを超えるIT企業が現れ、その企業(もしかしたら、国家かも)に悪意があったなら・・・と考えるとゾッとします。そうならないためには、僕たちがしっかりとした意識・判断・行動をしなくてはいけませんね。
(駄文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました)
目次
- プロローグ:「検索」がもたらすもの
- 天才集団の牙城 - 初めて明かされるその内部
- 潜入 - グーグル本社
- 秘密のベールに覆われたグーグル
- 「検索」で世界を変えたグーグル
- ガレージで生まれた検索ベンチャー
- 「検索」を生み出したバックリンク解析研究
- ページランクと検索
- 検索結果はこうして出される
- 「学問」から「ビジネス」へ
- ロングテールビジネス
- “広告革命” - 世界で何が起きているのか
- 広告革命の衝撃
- 効果がすぐにわかる広告
- キーワードの巨大市場
- インドに出現したグーグル長者
- グーグル検索が世界中の若者を席巻する
- 検索順位が企業の存続を決める
- ブルース・クレイ社
- 広がる熾烈な順位争い
- マーケティングに変革をもたらした検索
- 既存のメディアを揺さぶるグーグル
- メディアの未来
- コンピュータがニュースを編集
- 人類の知的財産が検索可能に
- 上空から世界全体を見わたす
- 決済情報も取り込む
- 製品をすばやく国際化する
- ユーチューブ買収の衝撃
- 誰が検索順位を決めるか
- 検索順位をテクニックで変える
- グーグル爆弾(グーグル・ボム)
- 広がる検索スパムと追われる対策
- ブルース・クレイ社の戸惑い
- 中国問題
- “グーグル八分”の恐怖
- グーグルにすべてを委ねるのか
- グーグルに蓄えられた個人履歴
- 進む広告・マーケティングの“パーソナル化”
- サンフランシスコWi-Fi計画の波紋
- 監視社会への不安
- パーソナライズ検索とグーグル・サジェスト
- 膨張する巨大IT企業の行方
- 日本の形態市場を制覇せよ!
- グーグルのねらいは?
- グーグルと著作権
- 独占禁止法の問題も争点に
- 「表現の自由」は機能しているか
- 独創はどこまで続くか
- 「グーグルは『知』ではない」
- 人類のライフスタイルとグーグル
- 「自分の記憶」まで預ける若者たち
- 地球規模のデータセンターへ
- 計画はどこまで
- 情報をすべて集めた未来は
- グーグル社員の夢・ホワイトボード
- エピローグ:「退化」する私たちの未来
- インタービュー
- エリック・シュミット - 最高経営責任者
- オミッド・コーデスタニ - 副社長
- マリッサ・メイヤー - 副社長




コメント
コメント一覧 (3)
いつも大切な論点をボカさずにお書きになっていて感心します。見過ごしてしまいがちなポイントに気づかせてくれるNojeeさんに感謝しています。
さて本日のような章題についてコメントを真面目にするととてつもなく長くなりますが、ボクが強く同感するのは以下の二点でしょう。
>知を構造化することと、大量の情報をもつことは、まったく異なる
>情報収集にかけた膨大な手間と時間は、無駄なように見えて、構造化され、それが『閃き(ひらめき)』を生み出す
ネット社会の情報洪水(操作)によって溺れそして我を見失っている友人もいます。
常に本質と正義(あるいはあるべき姿)を見失うことのなきよう自分を戒めたいと思います。
ホント、「Google誕生 ガレージで生まれたサーチ・モンスター」は楽しく読めたのですが、この本は読み進めていくほど、大丈夫なんだろうかって心配になりました。Googleの1番上に表示される情報が正しいとは限りませんから。若い人たちのGoogle依存が更に進むと、何が正しいのか分からなくなってしまいますね。その点ではWikipediaは素晴らしいと思います。
私3年くらい前から、
パチンコは賭博だ。
警察は賭博幇助してると、
ちょくちょく書いてたら、
どこかの誰かが
【裁判】 「パチンコCR機は、違法な賭博機だ!警察は賭博幇助してる!」 男性が提訴…全国集団訴訟につながる恐れも★